僕等の青色リグレット


「わあー、気持ちいいね」


水がピチャリ、と跳ねた。

神起島には、手つかずのまま残されている自然が多くある。ミナツの森もその中の1つで、中には樹齢100年を超える木もあるんだとか。

この小川も天然のもので、大きな岩に腰を掛けて足を浸すとひんやり冷たくて気持ちいい。

サラサラ流れる水の音、鳥の声、虫の声、葉鳴りの音、耳を澄ますと心地いい自然の音が聞こえてくる。

歩き疲れたこともあって目を閉じる私の隣で、晴登くんは何やらゴソゴソと動いていた。


「芙海」

「ん?」

「ほら、見てみ、サワガニ」

「うわぁ! 大きい!」

「こいつ、足1本無くしてる」


晴登くんはサワガニを顔の高さまで持ち上げて、「可哀想になぁ」と、甲羅を指で撫ぜた。左側の欠けているの足には触れないように、そっと。丁寧に。

彼は生き物にも優しいんだね。

しばらくサワガニを見つめていた晴登くんだけど、やがて岩の上に離してやった。


「器用に歩くね、足が1本なくてもあんまり歩行に関係ないのかな」

「そんなことないやろ、こいつなりに努力してるはずや」

「努力……」

「芙海は、足大丈夫か?」

「え?」




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