僕等の青色リグレット
恐る恐る聞いてみたけど、晴登くんは曖昧に笑うだけで答えてくれなかった。
でも、その表情をみれば何となく分かる。きっと怖がられたり、気持ち悪がられたりしたのだろう。
そりゃ私は幽霊とか怖いし超常現象なんか信じてないけど、晴登くんのことは怖いとも気持ち悪いとも思わない。大変そうだなって思うけど、変に思うことなんて絶対にない。
そう伝えようとした時だった。
『……アっ、……アっ、』
風の音に紛れて、何かが聞こえた。
それは猫の鳴き声や人間の赤ちゃんのような甲高いもので、虫や鳥でないのは確かだ。まさか獣なんてことはないよね?
晴登くんの方に視線を向けると、彼は珍しく固い表情で茂みに目を凝らしていた。
「は、晴登くん」
「しっ! 静かにして」
そうしている間にも声は、どんどん近づいてくる。
小川から足をあげた私たちは水滴を拭き取ることも忘れて息を殺した。どくん、どくん、心臓が嫌な音を立てる。
どうかどうか、太刀打ちできない相手ではありませんように!
胸の前で手を組み願った、その瞬間。
「うわあぁぁぁぁん」
茂みから出てきたのは、小さな男の子だった。
しかも、すっごく泣いてる。泣いたままでこっちに一直線、転がるように走ってきたかと思ったら男の子はそのまま晴登くんに抱きついた。
「……カケル?」
「はると兄ちゃん!」