僕等の青色リグレット
2年前のことって何だろう……?
そろりそろり奥へ進むと、辺りは水を打ったように静まり返っていた。
というのも当然と言うべきか、神楽の練習で人がいっぱいいると思っていた境内には誰もおらず、本殿の方に2つの人影があるだけだけ。
1人は怒鳴り声をあげていた宮司さん、そしてもう1人は晴登くんだった。
『お前のその中途半端な気持ちが駄目やと言ってるんや』
『中途半端やない、もうずっと考えとったことや』
『生意気言うな、半人前のお前に守ってもらうもんなんかねぇ。この神社は渡さんぞ』
『俺は、ただ父さんの体を、』
『もう、ええ、この話は終わりや』
自分が怒られたわけじゃないのに、身をすくめてしまう。
普段はあんなに温厚で優しい宮司さんが怒っている姿も、その宮司さんに対し声を荒げている晴登くんの姿も、私には初めて見る光景で心臓がバクバクいっている。
見てはいけないものを見てしまった。
そんな気持ちで引き返そうとしたとき、足元にあった小枝を踏んでしまいパキンという音に晴登くんが振り向いた。
「誰や? 誰かおるんか」
「あ、あの」
「なんや、芙海か」
今日は何だか気まずい場面に出くわしてしまう日だな。
草履を履いて境内に下りて来た晴登くんは、「変なところを見せてしまったな」と、苦笑しながら後頭部に手を当てた。