僕等の青色リグレット
「これ、着とき」
「いや、悪いしいいよ」
「いいからいいから」
でも、と言いかけ男の子の顔を見るとそこには困惑の表情が浮かんでいる。
髪から滴り落ちる雫、濡れて身体に張り付いている洋服が透けて――。
「あっ」
そこで初めて自分がどんな格好をしているかを知り、ギョッとした。
同じように全身がびしょ濡れになっている私も当然ながら服が透けているに違いない。
恥ずかしさで顔が、かぁーと熱くなる。
「お借りしますっ!」
咄嗟に叫んだ私は、自分の体よりもずっと大きいパーカーの前をかき合わせた。
「あんた見慣れん子やね、島の子じゃねぇーやろ」
「あの、私は、」
「戻ったらシャワー浴びてすぐに寝た方がいいで、自分で思っとるよりずっと体力を消耗してるはずやけぇ」
「あ、うん」
「ほんなら」
「あ……」
私が何も言えないうちに男の子は、軽く手を振り向こうに行ってしまった。
点々と濡れた足跡が続いている。
「あ」しか言ってない私は、その後ろ姿を見えなくなるまで見つめた。
濡れていた岩はいつの間にか渇き、キラキラと夏の日差しが光っている。
お礼はおろか名前も聞き忘れてしまったけど、島の子だよね?
ぼんやり眺めているうちに海風は和らいでいた。