僕等の青色リグレット
その観光客というのは、如何にもやんちゃそうな若い男たちだったと輝くんは言い、当時を思い出したのか眉間にシワを寄せた。
膝を抱える手が震えている。
「奴らの標的は風子やった。あっと言う間に取り囲まれた俺らはボコボコにやられて、風子だけ別の場所に引っ張られて行ったんや」
「そんな」
「もちろん、俺も晴登も応戦したけど、向こうは5人もおった。人数からいっても勝てるはずがない」
「風子ちゃんは……?」
その問いに輝くんは答えず、首を小さく左右に振った。
「俺はそん時、気を失ってしまって起きたら病院やった。だから覚えてないんや。後で聞いたところによると晴登が大人を呼びに行って、何とか最悪の事態は逃れたようやったけど、」
「けど?」
「風子は心に傷を負ってしまった。それで今も入院している」
そう、だったんだ……そんなことがあったんだ。
話を聞いただけでもぞくりとするほどなのに、風子ちゃんの気持ちを考えると胸が張り裂けそうになる。さぞ怖かっただろう。怖いなんてもんじゃなかったはずだ。
輝くんたちだって、怖かっただろう。
輝くんの方に視線を向けると、彼は何故だか自虐的な笑みを浮かべていた。
「ここまでなら、ただ不幸な出来事やと思うやろ」
「違うの?」
「当時の大人たちも風子の両親も俺らは悪くない、よく守ってくれたと言ってくれたけど、本当は少し違う。港町に行きたいと言い出したのは、風子じゃなくて俺なんや」