寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない




「やっぱり久しぶりに庭に出て散歩をして、疲れたのかしら。あ、もしかしたら、私が長くここにいるから気を遣ってる?」

 アメリアと侍女のリリーも加わった賑やかな朝食は、会話も弾み楽しかったけれど、クラリーチェには体力を使うものだったのかもしれない。
 セレナはもう少しクラリーチェのを体調考えればよかったと後悔した。

「なに暗い顔をしてるのよ。久しぶりにセレナと一緒に食事ができたし、アメリアの料理を堪能して満足よ。それに、最近は体力もついてきたから、あれくらい平気」

 明るく話すクラリーチェの表情は晴れやかで、セレナに気を遣っているわけでもない。
 セレナはその様子にホッとした。
 そして、さっき庭でクラリーチェの腕をつかんだ時、以前よりも筋肉がついたように感じたことを思い出した。
 部屋に閉じこもり寝込むことの多い毎日を過ごしているにしては、その変化は妙で、セレナは首をかしげた。

「お姉様、あの……さっき、腕をつかんじゃったでしょ? それでね」

 悪い病気ではないと思うが、クラリーチェの変化が気になったセレナが口を開いた時、部屋をノックする大きな音が聞こえたかと思うと、執事が急いで部屋に入って来た。

「どうしたの?」

 セレナは慌ただしく近づいてくる執事に訝しげに声をかけた。
 国王陛下に一番近い執事であるファロルドがわざわざここに来るのは珍しく、セレナは何があったのかと不安を感じた。
 セレナはクラリーチェに視線を向けるが、クラリーチェは慌てることなく落ち着いていた。
 焦るセレナとは対照的で、姿勢を正し、ファロルドの様子を見守っている。


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