寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「ファロルド、どうしたの?」
余裕のあるクラリーチェの声を聞いて、セレナも落ち着こうと気持ちを整えた。
「あ、あの、陛下が王女様ふたりをお呼びなのですが……」
ファロルドは彼女たちの前に立つと、荒い息を隠そうともせず、思いがけない言葉を口にした。
「ミ、ミノワスターの国王陛下からの使者として、カルロ王太子殿下とテオ王子様がお見えになっています」
セレナとクラリーチェが応接室に入った時、ジェラルドと向かいあってカルロ王太子とテオ王子がソファに腰かけていた。
金糸で刺繍が施されたジュストコールに身を包んだふたりは国王と言葉を交わしているが、三人の表情はそろって明るい。
正装であるカルロとテオの姿は凛々しく、明るい日差しに輝いていた。
その姿を目にして、セレナの鼓動はとくとくと音を立てた。
やけにその音が大きく聞こえ、セレナは落ち着かない。
この応接室では重要な客人をもてなすことが多く、豪華な調度品が揃えられている。
絨毯やカーテンも高価なものが使われていて、王宮の中でも特別な場所だ。
滅多なことではこの部屋に入ることが許されないセレナは、応接室に入った途端緊張し、恐る恐る歩を進めた。
ファロルドからの連絡を受け、慌ててドレスに着替えたのだが、その重さに慣れていないセレナの足取りは不安定だ。
「お父様、遅くなりました。お呼びでしょうか」
戸惑うことなくしっかりとした足取りで国王の側に立ったクラリーチェは、片足を後ろに下げ、カルロとテオに向かって礼儀正しくお辞儀をした。
「カルロ王太子殿下、テオ王子様、お久しぶりでございます」
大きな声で挨拶するクラリーチェの横に並び、セレナも慌てて頭を下げた。
「お、お久しぶりでございます……あ、あ……きゃあ」
テオが座るソファの横でお辞儀をしたが、ドレスの長い裾に慣れないセレナはつまずき、バランスを崩してしまった。