寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 毛足の長い絨毯に倒れそうになった時、テオがすっと立ち上がり、セレナの体を支えた。

「あ、あ、ごめんなさい……」

 テオの胸に飛び込んだセレナは、慌てて体勢を立て直そうともがいたが、体に回されたテオの手に力が入り、抱きかかえられるような時間がほんの数秒、続いた。

「大丈夫か?」

 セレナの耳元にテオの吐息が届き、セレナの頬が赤くなる。
 つまづいただけでも恥ずかしいというのに、あまりに近いテオの温かさを感じて、セレナの体中が熱を帯びた。

「騎士団の中で鍛錬をするセレナ姫も生き生きしていて素敵ですが、久しぶりに見るドレス姿も捨てがたいですね」

 テオはセレナをしっかりと立たせると、セレナの姿をゆっくりと見ながら笑った。
 普段気慣れていないとはいえ、王女としての立場を自覚している彼女には、ドレス姿がよく似合う。
 光沢のある紫の生地で仕立てられたドレスはセレナの足首までをすっぽりと隠し、襟元には白いレースがあしらわれている。
 それはセレナの健康的な肌に映え、テオは目が離せない。
 すると、その様子を見ていた国王のジェラルドが、ふうっと息を吐き出した。

「セレナは小さな頃からテオ王子に懐いていたな……」

 思い出すように目を細めた父に、セレナは首をかしげた。


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