寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
すると、カルロも立ち上がりクラリーチェの腕を取った。
「クラリーチェ様は、私とこちらへ」
カルロとクラリーチェは、ジェラルドの横にあるソファに並んで腰かけた。
カルロの動きに逆らうことなく素直に従うクラリーチェをぼんやりと眺めていたセレナは、ふたりが微笑み合うのを見て、ハッとした。
「あ、お姉様、ごめんなさい。席を変わりましょう。テオ王子様はお姉様の婚約者ですから……」
セレナは慌てて立ち上がった。
このままテオの隣にいたいという気持ちをぐっとこらえ、腰に置かれたままのテオの手から離れた。
すると、それを追うようにテオの手が伸び、セレナの腕を掴んだ。
「あ、テオ……王子?」
振り返る間もなく、テオはセレナの手を引き寄せ、再び自分の隣に座らせた。
「ここでいいんだよ、セレナ姫」
「え、でも、お姉様が……」
ちらりとクラリーチェを見れば、やはりカルロの隣でにこやかに笑っている。
親しすぎるわけではないが、ふたりの間に漂う空気はとても穏やかで落ち着いている
セレナはカルロとクラリーチェが互いに想いを寄せている事には気づいていたが、ふたりの間にあった遠慮というものがないような気がして、驚いた。
陛下がこの場にいるというのに、いったいどうしてだろうと考えていると、テオがカルロたちの仲睦まじさを見てくすりと笑った。
「あ、あ……テオ王子……。お姉様の隣に行かなければ。だって……テオ王子はお姉様の事が……あ……」
セレナはそう言いながら慌ててテオに向き直った。
たとえカルロとクラリーチェが想い合っているとしても、テオはクラリーチェの婚約者なのだ。
それに、ランナケルドの王配として、国を率いていく身。
現国王に、クラリーチェとカルロの本心を気づかれてはいけない。
もちろん、セレナがテオを愛しているという事も、知られるわけにはいかないのだ。
それに何より、テオはクラリーチェを愛している。
セレナはテオの顔を覗き込み、カルロと席を代わるよう、目で訴えた。
けれど、テオはニヤリと笑い動こうとしない。