寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



「私と一緒に、川もミノワスターに嫁ぐのね……」

 クラリーチェのためなら川の流れさえ変えてしまうのだと知った時、セレナは自分が両親から愛されていないと改めて知った。
 思いがけず大きなショックを受けたのは、諦めたつもりでいても、愛されているとどこかで期待していたのだと、セレナは苦笑する。

「……私って、甘いな」

 すでに川の工事は終盤に入り、セレナとテオの結婚式が終わればミノワスターに水が流れる予定だ。
 つまり、ミノワスターは水資源を持つ大国となるのだ。
 セレナは複雑な想いを隠すように窓の外を眺め続け、父と母の視線から目を逸らした。
 本来なら、この場で両親へ感謝の気持ちを伝えるべきだが、セレナは何をどう言えばいいのかわからず、黙り込んでいた。
 ジェラルドとサーヤは、親子で過ごせる最後の貴重な時間を明るいものにしたいと思いながらも、セレナの思いつめた表情を見て、声をかける事ができずにいた。

 
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