寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
ミノワスターの王城付近では、騎士団が警備のために通りの両側に並んでいた。
いよいよ迎えた王太子殿下の結婚の日、大勢の国民が騎士たちの後ろに立ち、セレナを乗せた馬車がくるのを今か今かと待っている。
テオがランナケルドに何度も訪れては国民たちとの距離を縮めていたように、セレナも子供の頃から何度もミノワスターに来ている。
カルロと結婚し王太子妃となる事が決まって以来、節目節目に訪れていた。
国民たちは、セレナが成長していく様子を見守りながら、早く結婚式の日を迎えられるよう願っていた。
おとなしくて人形のような王女ではなく、ミノワスターに自ら馬に乗ってやってくるような活発な女の子。
優しく明るい人柄もセレナの人気を高め、誰もがセレナが嫁いで来る日を待ち望んでいたのだ。
そして、誰よりもこの日がくるのを待っていたのがテオだ。
クラリーチェに代わってセレナと結婚する事になっただけでなく、突然ミノワスターの王太子となり、いずれは王になると決まった。
その事をテオに告げた時のリカルド王の複雑な顔を思い出すたび、テオは無表情を装うことに苦労する。
『クラリーチェ王女とは……その、これまで何もなかった……んだな?』
そんな質問にも苦笑し「クラリーチェ姫が他国へ嫁ぐとしても、なんの支障もありませんよ」と答えた。
女性との噂が華やかなテオの事だ、結婚前にクラリーチェと深い仲になっていると思われても仕方がないが、直接問われた時には苦笑を隠せなかった。
テオはクラリーチェとの婚約が調って以来、女性と付き合った事も、深い関係になった事もないのだが、どう言っても誰も信じないだろうと思い、この類の質問はあっさりと受け流す事にしている。
王子という立場と整った見た目のせいで、テオの周囲にはいつも女性がいた。