寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「きゃっ。こ、こわい」
「じっとしないと落ちるぞ。……まあ、離さないけどな」
横抱きにしたセレナの真っ赤な顔を覗き込みながら、テオは優しい声で笑った。
セレナを腕に抱き、ゆっくりと歩を進める。
長身のテオに抱かれ、その高さが怖くて身を固くしたセレナは、テオの胸に顔を埋めた。
その様子に、テオは満足げな笑みを浮かべる。
セレナの金色の髪が、太陽の日差しを浴びて輝き、太陽の天使と呼ばれるのも納得だ。
汚れた素足は小さくてかわいらしい。
一方、テオの強い意志を宿した切れ長の目と薄い唇、そして形のいい顎。
おまけに王子となれば女性からの人気は高い。
ただ、いずれ国益につながる政略結婚をしなければならないことを考えればどんな女性にも本気になれなかった。
兄であるカルロが次期国王として期待される一方で、頼りにならないお気楽な王子と陰で言われても、それを気にすることなく自由に生きてきた。
そして、本気で手に入れたいと思う女性に出会うことなくその日その日を気楽に過ごしていた。
けれど、今自分の腕の中にいる小さな女の子を、何故かこのまま手離す気にはなれなかった。
十六歳のテオとまだ十歳のセレナ。
「まだ子供なのになあ……」
じっと体を丸めているセレナを見つめながら、テオは苦笑する。