寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



 いずれ兄と結婚し、テオが暮らすミノワスターの王妃としての未来が待っている女の子。
 彼女はまだそんな未来を知らないのだろう。

 今日の晩餐会も、クラリーチェの誕生日を祝うためのものだとはいえ、クラリーチェとの結婚が決められている自分と、セレナとの結婚が決まっているカルロをランナケルドの王族や貴族たちに紹介するという目的もあるのだ。

 大国と呼ばれるにふさわしいミノワスターは、弱い兵力ながらも豊かな資源で穏やかに暮らすランナケルドを守り、その農作物を優先的に買い付けている。

 ミノワスターには国を十分に潤す川がなく、降水量が少ない年には様々な影響が出る。
 農作物の収穫量もそのひとつで、ランナケルドの農作物は、ミノワスターにとっては重要な資源となっている。 
 それゆえ、自国の兵を国境沿いに駐留させ、ランナケルドを守っているのだ。

 その関係をこの先も続けていけるよう、両国の王子と王女の結婚が決まったのだ。

 王子という立場を前向きに受け入れているテオは、それを聞かされてもとくに抵抗することなく、すんなり受け入れた。
 それは王太子である兄カルロも同様で、セレナと結婚し、ミノワスターの王となることに同意している。

「……だけど、兄さんのあの目……」

 テオは、晩餐会で見せたカルロの表情を思い出す。

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