寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



「無理でも、頑張ってもらうしかないな」

 テオがくつくつと笑う。
 そしてセレナの赤い顔を目を細めて見つめ、満足そうな息を吐き出した。

「今は痛いだけで逃げたくなるかもしれないが、俺に何度も抱かれるうちに、気持ちよくなる」

 言い聞かせるようなテオにセレナは小さく頷いた。
 テオに愛撫され、すでに体には初めて感じる心地よさが溢れている。
 愛する人から求められ体中を探られれば、気持ちいいに決まっているのだ。
 セレナは浅い呼吸を繰り返しながら、無意識にテオの首に腕を回した。

「……殿下、大好き」

 セレナの突然の告白に、テオは驚き、ハッと息をのんだ。

「セレナ……」

 まさか今、セレナからそう言われると思っていなかった。
 テオは思わず口を閉じた。
 好かれているとは思っていたが、セレナの中に、テオへの強い愛情はまだ育っていないと思っていたのだ。
 それでも、テオにセレナを諦めるつもりはなく、時間をかけて彼女の愛を手に入れようとしていた矢先の言葉。
 普段の軽やかな口調で同じ言葉を返そうとしても、本気の想いを軽々しく口にしたくない。
 どう応えればセレナを喜ばせるだろうかと思ううちに、セレナが悲しい顔を見せた。
 セレナは、思わず口をついてでた自分の想いに、テオが何も答えてくれない事にショックを受けていた。
 テオは、やはり今でもクラリーチェに想いを残しているのだ。
 そして、自分はクラリーチェには敵わないのだと、悲しいながらも認めた。
 長い間テオの婚約者であったクラリーチェとテオがふたりでいる時の優しい空気感を思い出し、目の奥が熱くなった。



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