寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 美しい姫として有名なクラリーチェを紹介された時のカルロの表情はこれまで見たことがないものだった。

 いずれ歴史に名を残す賢王になるだろうと言われているカルロの、呆然とした顔はかなりレアなもので、テオは二度見してしまったほどだ。

「いよいよ兄さんにも初恋か……」

 テオは複雑な表情でそう呟くと、腕の中にいるセレナに視線を落とした。

 すると、恐る恐るとでもいうように顔を上げて辺りを見回しているセレナと目が合った。

「どうした? とりあえず離宮に行くからもうしばらくおとなしくしてろ」

「……歩ける。私、自分で歩けるもん」

 セレナの小さな声に、テオはくすりと笑った。

「歩けるだろうけど、そうなると俺はそのかわいい顔をじっくり見ることができないだろ?」

 子供に言い聞かせるにしては甘い声のテオに、セレナの顔は再び赤くなる。

「ほら、その真っ赤な顔をもっと見せろよ。今日ミノワスターに帰るから、しばらく会えないぞ」

「え、今日帰るの?」

 テオの言葉に、セレナは声を上げた。

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