寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


「では、私がお教えできる事は以上です」

 セレナはハッと顔を上げた。
 目の前で、ソフィアがにっこりほほ笑んでいた。

「あ、ご、ごめんなさい。ぼんやりしていて……」

 午前中、ソフィアが王城に来てセレナのために話をしてくれていたというのに。
 このところ気分が晴れないせいか、ソフィアの話を聞く事なく考え込んでいたようだ。

「ごめんなさい。せっかく来てくださったのに……」

 セレナは丸テーブルの向かい側に座るソフィアに頭を下げた。
 王城内の図書室での勉強会は今日で三回目なのだが、ソフィアがセレナに教える事はなくなり、今日で勉強会は終わりだ。

「セレナ様、大丈夫ですよ。もともと私がこちらに来る必要はなかったんですから。それを、慣例だと言って無理矢理勉強させようとする心配性のテオ殿下のわがままのせいなんですから」
「は? わがまま……」
「そうですよ。この先セレナ様が王族として困らないように私が持ってる知識のすべてを教えろなんて言ってましたけど、王女として育っているセレナ様はとっくに妃殿下としての知識も技量もお持ちです。安心してくださいませ」
 
ソフィアは一息にそう言って、にっこりと笑った。
 今年二十五歳だというソフィアは、ふたりの男の子の母であり。

『旦那様そっくりの息子が私の周りを走り回っているんです。これほどの幸せはないわ』

躊躇なく口にするほど旦那様を愛する可愛い女性だ。

元王族としての気品が感じられる美しい所作や、決してぶれる事のない強い意志を見せられるたび、セレナは彼女に惹かれ、好きになっていた。


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