寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「みんな、お姉様のことばかり」
「そんなことないだろ。少なくともアメリアはセレナを愛していただろう?」
「それは……うん。そうだった。アメリアは私の味方だった。よく叱られたけど」
何かを思い出したのか、セレナがくすりと笑う。
「叱られるのは、セレナが何かをしでかした時だろ? 夕食が待てなくて料理長に頼んでクレープを焼いてもらったり、退屈だからと言って離宮の近くの学校に忍び込んでは子供達と遊んだり……」
「ふふ。そんな事もあった。懐かしい」
「離宮で働く人たちはみんなセレナを愛していただろ? 今も会いたいって思ってるはずだぞ」
「うん。私も会いたいけど……テオが……」
苦しげに呟いたセレナは、テオの背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「ん? 俺がどうした?」
テオはセレナを抱きしめながら、この話の流れの中で自分の名前が出たことに首をかしげた。
そして『殿下』ではなくテオと呼ばれたことも気になったが、酔っているせいかと納得する。
酔えば本音が出ると言うが、セレナも本当はテオと呼びたいのだと思えば嬉しい。
「セレナ? 俺がなんだって?」
テオにぎゅっとしがみついたままのセレナに、問いかければ、セレナはイヤイヤというように首を何度も横に振った。