寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「……お姉様とアリスさん、とても似ていたから、嫌なの。私、アリスさん嫌いじゃないけど、会いたくない。お姉様にも会いたくない。テオにも会ってほしくない」
いつの間にかセレナの頬には涙が流れ、ヒクヒクとしゃくりあげながら「会いたくない、ふたりはそっくりだもん」と繰り返している。
それでもテオにしがみつく力が弱まることはなく、セレナはテオの胸に体を預けたまま悲痛な声を上げ続ける。
「セレナ、どうした。落ち着け。どうしてクラリーチェに会いたくないんだ? まあ、アリスに会いたくないのは公爵にあんな事を言われたんだ、わからなくもないが。どうしてクラリーチェにも会いたくないんだ?」
セレナを落ち着かせようと、テオは彼女の背中をポンポンと叩いた。
セレナがここまで興奮している姿を見るのは初めてだ。
いつも自分の感情を見せている振りをしながら、本音をうまく隠している彼女が涙を流しているのだ、よっぽどの事があったんだろう。
クラリーチェとアリスが似ていると口走っていたのも気になった。
「まあ、クラリーチェもアリスも気が強くて頑固だから似ているといえば似ているけどな」
ふと口走ったテオの言葉に、セレナがピクリと反応し、おずおずと顔を上げた。
そして涙で濡れた目でテオを睨みつけるが、テオはその顔もかわいいと思えて仕方がない。
「ん? どうした?」
テオはセレナの頬を優しく手でぬぐった。
すると、セレナは深く息を吐き出し、気持ちを調えた後、再び口を開いた。
「お姉様もアリスさんも、ピンクブロンドの綺麗な髪で、目はキラキラなブルー」
「あ? ああ、そうだな。それがどうした? そんな女性ならたくさんいるだろ」
「それに、スタイルも似てるし」
「……そうか? まあ、ふたりとも華奢だよな。で?」
どうしてそんなことをセレナが口にするのかわからず、テオはセレナの体をそっと引き離そうとするが、セレナはそれを拒むようにさらにぎゅっとしがみつく。