寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「そ、それにふたりともキレイ。私みたいに日焼けしていないし体に傷跡なんてないし。それに、ふたりとも優しくて……いい人だもん。テオが好きになるのもわかる」
「……はあ? 好きって、そんなことどうして……」
思いがけない言葉に、テオは慌てた。
「俺は別にクラリーチェもアリスも嫌いじゃないが好きってわけでもないぞ」
「嘘ばっかり。いつもいつも、お姉様に会いに来てたし、優しい顔でお姉様を見つめてニコニコしながら話してた。私にはあんな顔見せてくれたことないもん。アリスさんと一緒にいたのも、お姉様に似てるからでしょ? そうに決まってる。だって、テオはお姉様が好きだったのに、カルロ王子とお姉様が愛し合ってるから……仕方なく私と結婚してくれた」
ひと息に話し、セレナは浅い呼吸を繰り返す。
顔が赤いのはワインのせいだけでなく、興奮しているせいだろうが、テオにはセレナがそう思う理由がさっぱりわからない。
小刻みに震える肩を抱き、しゃくりあげる体を揺らしても、セレナはテオの背中を叩きながら「テオはお父様とお母様と一緒なの。お姉様が一番大切なの」と繰り返すばかりで要領を得ない。
「セレナ……」
セレナはテオと名前で呼んだだけでなく、クラリーチェとアリスに嫉妬しているような言葉を繰り返している。
「か、可愛すぎるだろ……」