寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「俺は誰よりもセレナを愛しているし、他の女はどうでもいいんだぞ」
弾む声でテオは伝えるが、セレナからは何の答えもなく、それどころか規則正しい寝息が聞こえてきた。
「セレナ?」
そっと顔を覗き込めば、やはり、いつの間にか眠っている。
「……起きていても可愛い。眠っても天使のようだな……俺だけの天使」
テオはセレナの頬に残っている涙を拭った。
どんなに寂しくても、決して我を忘れる事なく落ち着いているセレナが吐き出した言葉と涙の意味は重い。
彼女の本心を知る事ができてテオは満足だが、悲痛な声を二度と聞きたくはない。
「ようやく……こうして誰にも遠慮せずに愛してるって言えるようになったんだ、涙なんてもう流すことはないし、俺の事、存分に愛していいんだぞ」
そう、セレナがテオを慕っている事は、出会って間がない頃から気づいていた。
テオも、まだ子供だったセレナに惹かれていた。
セレナが成長するにつれて、その想いが消えていくのではないかといつも不安を感じていたが、それは杞憂に終わった。
もしもカルロがクラリーチェではなくセレナを気に入っていれば、テオは決められた通りクラリーチェと結婚し、ランナケルドの王配として今とは違う人生を受け入れていただろうか。
それとも、セレナを諦めきれず、あがいていただろうか。
どうなっていたのか、わからないし、考えたくもない。
「良かった……セレナと結婚できて、本当に良かった」
緊張を解いたようにホッと息を吐き、テオはセレナの額に唇を落とした。
そして目を覚ます気配のないセレナをベッドに寝かせ、自分も隣に並んで彼女を抱き寄せた。
上掛けをふたりの体にかけると、テオもあっという間に眠りに落ちた。