寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「そうか、離宮で料理もしているのか」
テオの低い声に、カルロは視線を向けた。
「どうした? クラリーチェの料理を食べたいのか? さすがに料理上手なセレナにはまだまだ敵わないがアメリアに教えてもらいながら一生懸命作ってるから、今度味見してやってくれ」
「……いや、遠慮しておく。クラリーチェの料理を食べるならセレナのうまい料理を食べるからいい。それに、今そんなことをしたらセレナが落ち込むに決まってるだろ」
テオはイスの背に体を預け、大きく息を吐き出した。
「クラリーチェが悪いわけじゃないが、セレナにとってアメリアも離宮も特別なんだ。唯一自分を受け入れてくれる場所にクラリーチェがいれば、セレナが平気でいられるとは思えない。ただでさえランナケルドに自分の居場所はないと思い込んでるのに、両親だけでなく、アメリアまでもがクラリーチェの側にいると知ったセレナがどれほど悲しむか」
セレナの気持ちを思い、テオは悩む。
「そうだよな、セレナはアメリアだけが自分の味方だと思っていたからな。自分がいた場所にクラリーチェがいたら落ち込むか……」
「まあ、落ち込むだろうけど、仕方がない。来月の兄さんの結婚式の時には離宮に行くつもりだろうし、クラリーチェが弾けている事も知るはずだ。あー、クラリーチェが学校にまで顔を出してるなら、子供たちとも仲良くやってるんだろうな」
テオはそう言って肩を落とした。
「とはいっても結婚式を欠席するわけにはいかないし。セレナには耐えてもらうしかないか。結局、セレナはもうミノワスターの王太子妃なんだ。クラリーチェやアメリアがどうであれ、ミノワスターで幸せになってもらわないと」