寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
 テオの唇と、いつの間にかドレスの上から胸に触れている指先の動きに反応してしまい、自ら体を預けてしまう。
 酔っているわけでもないのにどんどん熱くなる身体にセレナは混乱しつつも、テオと触れ合える時間は極上で拒めない。

「ん、いい子だな」

 テオはセレナの体を受け止め、胸から唇へと順にキスを落としていく。

「あ……ん」

 重ねた唇の熱さに目眩を覚えながら、その心地よさにセレナは夢中になった。
 しがみつくようにテオの背中に腕を回し、必死でキスに応え続ける。
 何もかもテオが初めてのセレナにとって、キスもまだまだ慣れていない。
 ぎゅっと目を閉じたセレナがあまりにもかわいらしく、テオはいっそう激しく唇を貪り、吐息の合間に開いた唇の隙間から入れた舌で、セレナを味わった。
 そして、リボンがほどかれてできた隙間から手を差し入れ、敏感になっている胸を楽しむ。

「テ、テオ……」

 セレナは浅い吐息を繰り返し、テオから与えられる刺激に耐える。
 結婚して以来何度も抱かれているが、まだまだ恥ずかしく、そして同時に心地いい。
 ミノワスターに戻れば、途端に忙しい公務が控えている。
 夫婦である前に、王太子と王太子妃としての立場を優先せざるを得ない毎日がまた始まるのだ。
 誰に見られるかもわからず、そして恥ずかしすぎてどうしようもないというのに、セレナはテオとふたりで過ごせる時間が愛しくて、さらに距離を詰めた。
 しがみついてくるセレナの動きに合わせ、テオはセレナの耳を甘噛みし、応えた。
 セレナが自分から求めてくることが嬉しくて、テオの身体は益々熱くなる。
 食事を忘れ、しばらくの間ふたりで抱き合っていると、不意に強い風が吹き、セレナの帽子が飛ばされてしまった。

「え……あ、やだ」

 ハッと手を頭に添えたが間に合わず、帽子はみるみる高く飛び上がって風に運ばれていく。

「どうしよう」

 セレナは乱れたドレスを気にすることもなくすくっと立ち上がり、帽子を追って走り出した。

「セレナっ」

 ドレスの裾を手で抱え、セレナは少し先を飛んでいく帽子を追って走る。
 時々飛び上がって掴もうとするが、風はかなり強く、指先で触れることもできない。

「飛んでっちゃう……」

 空を見上げ、足元に気遣うことなく走るセレナの後を、テオは追いかける。
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