寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「まあ、カルロとクラリーチェが両想いだというのもすぐにわかったし、いずれ……そう、いずれ運命は俺たちに味方してくれると信じたんだ。見たところ、ジェラルド国王は俺たちの気持ちを察していたようだから」
「あ……やっぱり、そうなのかな」

 ジェラルドは娘たちの恋心を知っていたのではないかと、セレナは密かに考えていた。
 水路を広げた理由も、セレナが想像している通りだろう。
 たとえランナケルドの象徴である川の流れを変えてでも、セレナがミノワスターで幸せに暮らせるように。
 そして、クラリーチェとセレナ、大切なふたりの娘が幸せな結婚ができるよう、動いてくれたのだろう。
 セレナは結婚する前に、その事を知りたかった。
 結婚する直前まで離宮で暮らす事などせず、王城で両親と一緒に過ごせばよかったと、後悔した。
 セレナは気づかずにいた両親からの愛情をかみしめるように、川の流れをじっと見つめた。
 そんなセレナの姿が意地らしく、テオは早くミノワスターに戻りふたりの部屋で存分に抱き合いたいと思うが、必死で無表情を装う。
 愛しすぎるほど愛しているセレナをようやく妻にでき、カルロとクラリーチェの結婚も無事に終えた。
 ここまでの計画があまりにも順調で、途中セレナが不審に思うかもしれないとヒヤヒヤする事もあったが、想定していた以上にうまく運んだ。
 ジェラルド国王がセレナへの愛情によって水路を広げたいと申し出たおかげなのだが、それは想定外の事だった。
 セレナの生い立ちを考えれば、ジェラルドやサーヤがセレナのためにそこまでの事をするとは思っていなかったのだ。
 そして、テオはジェラルドが三人の計画に気づいていたのではないかと考えている。
 そうでなければクラリーチェをもっと多くの医師に診せたり薬を取り寄せ、彼女の体調がよくなるよう試したはずだ。
 王家専属の医師ひとりにクラリーチェの体調管理を任せる事はなかっただろう。
 それに気づいて、ジェラルドへの印象は変わった。
 娘に甘く、そしてその愛情をうまく伝えられない不器用なオトコだと思っていたが、なかなか腹黒い人間かもしれないと思うようになった。

「……単なる親バカってわけじゃないかもな」

 ジェラルドを思い、ポツリと呟いたテオに、セレナは反応し視線を上げた。

「親バカ……?」
「あ、いや、なんでもないんだ」
< 278 / 284 >

この作品をシェア

pagetop