寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
ミノワスターの怒りを買うということは、その国に未来はないということになる。
ランナケルドが小国ながらも国民が飢えることなく穏やかな生活を営めるのは、このミノワスターの影響が大きいことにほかならない。
ミノワスターの国王であるリナルドとランナケルドの国王であるジェラルドは、子供の頃から顔を合わせる機会も多く、男同士の友情を育んできた。
いずれは国を率いていかねばならないプレッシャーと、自由に生きることが許されない窮屈な日々。
王太子としての立場を理解し合う親友であった。
ともに王位を継承し、一国の主となって以降も、その関係は続いている。
今ではミノワスターは小国ランナケルドを他国の侵入から守る要となっている。
逆に、ランナケルドの豊かな食糧事情に対してミノワスターには国民すべてが満足できるほどの農作物の収穫量はない。
ランナケルドと違い大きな川もなく、山も少ないせいか貯水能力も低いのだ。
ひとたび雨が降っても、国土の多くがサラサラとした砂地であるせいで、農作物の成長に必要な量の水を十分に確保できない。
穀物や野菜を収穫できる地域もあるのだが、その収穫高は、国民全体が必要とする量の半分にも満たない。
そのせいで、建国以来ミノワスターはランナケルドから農作物を調達し、水を運んでいるのだ。
それに対し、ミノワスターはランナケルドを他国の侵入から守っている。
小国ながらもランナケルドの国民がゆったりと幸せに暮らせるのも、ミノワスターという大国の後ろ盾があるからにほかならない。