寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
訳が分からないジュリアは、とりあえず言われた通り口を閉じてテオを見た。
どうしたのかと、視線で問いかけている。
テオはその問いに肩をすくめると、ジュリアの頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「セレナちゃんはお年頃だから、いろいろ複雑なんだよ。ジュリアも大きくなったらわかるよ。どうして今、顔が真っ赤なのか、きっとな」
テオはそう言い聞かせると、店の奥に控えていた護衛達に視線を向けた。
「セレナとしばらくここで食事をするから、市を楽しんできていいぞ。その後で王宮に行く。ミケーレたちもいることだし心配はない」
「え、食事……?」
テオの声が店内に響き、セレナは顔を上げた。
テオの視線の先をたどれば、店の奥のテーブルに、たくさんの皿を広げているミノワスターの騎士たちがいた。
彼らはテオの護衛で、騎士団の中でも精鋭だと言われる優秀な者ばかりだ。
彼らはテオの言葉に残っていた料理を慌てて平らげた。
そしてテーブルを離れ、テオとセレナのもとにやって来た。
テオと会う時にはいつも近くにいる護衛三人を、セレナは兄のように慕い気心も知れている。
テオよりも少し若いたくましい男性たちは、ランナケルドの女性の間でも人気がある。
「……市を楽しむのもいいけど、あまり羽目を外さないでね。あなたたちが露店を覗くたび、いつも女の子が熱い目で大騒ぎしてるから」
セレナは苦笑し、この三人が露店を歩けば女の子たちが喜ぶだろうなと想像した。
ミノワスターの騎士たちは屈強で見た目もよく、誰が格好いいだの、誰が王からの信頼が厚いかだの、よく噂になる。
彼らはテオと数回言葉を交わしたあと、大きな体を弾ませるようにいそいそと店を出て行った。
よっぽど市を楽しみにしているらしい。