寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 今日もきっと、この三人が市の話題を独占するのだろうと考えていると、テオは不満げに口を歪めた。

「俺だって、それなりに人気があると思うんだけど」
「え? なに拗ねてるの?」
「いや。いいけどさ。あいつらがいい男だってのは、俺も認める」

 投げやりな口調のテオは、気持ちを切り替えるようにジュリアに手を伸ばし、セレナの腕から小さな体を抱き上げた。
 ジュリアを見つめる瞳ははとても優しい。

「ジュリアは俺のことが大好きだもんな。この間も一緒に馬に乗って楽しかったな」

 ジュリアを自分の目の高さに抱き、テオは自信ありげにそう言った。
 ランナケルドの王室が開いている子供たちの保育施設に何度も顔を出しているテオは、子供たちの間でも人気がある。
 セレナも王族の一員として、というよりも、子供たちといる時間が大好きで、時間を作っては訪ねている。
 得意の刺繍を教えたり、一緒に料理をしたりしているのだ。
 王女だとはいえ、保育士が不足している施設の大きな戦力となっている。
 ジュリアと初めて会ったのもその保育施設で、まだ二歳になったばかりの彼女は人見知りもせず、テオやセレナに懐いてくれた。

「ジュリアはお馬さんと仲良しで、俺と一緒に乗って散歩したもんな」
「うん。パッカパッカしたよ」
「楽しかったな」
「うん。お馬さんの毛はやわらかくて気持ちいいの」

 大きな笑顔で話すジュリアに、テオは表情を緩めて「うんうん」と頷いている。
 本当にジュリアが大好きなんだな、とセレナは苦笑する。

< 39 / 284 >

この作品をシェア

pagetop