寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
食糧と軍事力。
互いに不足しているものを補い合い、協力し合っているのだ。
十歳を迎えたばかりのセレナがその辺りの事情を知るわけもなく、彼女にとって大切なのは、王女としての面倒なあれこれをどうやってさぼるかということだ。
家庭教師からの教育はもちろん、王女としてのたしなみを学ぶよう強いられる毎日にうんざりしている彼女の息抜きは、城下におりて買い物を楽しむことだ。
城下に幾つも並ぶ屋台は圧巻で、キレイな布や宝石をはじめ、洋服や珍しいお菓子。
城を抜け出して屋台を眺めながら歩くのが大好きなセレナは、普段見ることがないキレイな布や糸を見つけるたび、警護として側にいる騎士や侍女に買ってもらうのだ。
そして、買ってもらった糸や布を大切に持ち帰り、アメリアに難しい刺繍を教えてもらっている。
忙しい国王夫妻にかわり、セレナが赤ちゃんの頃から彼女の世話をしてきたのは、離宮の管理をしているアメリアだ。
セレナの姉であり、次期女王のクラリーチェは体が弱く、国王夫妻は彼女にかかりきり。
そのせいで、セレナは王宮にいても寂しい想いをすることが多く、離宮に行ってはアメリアに甘えてきた。
そしてアメリアは、いつかは他国に嫁入りするセレナの将来を考え、あらゆることを教えてきた。
王族として必要な礼儀作法や知識は家庭教師たちが教えるのが慣例ということで、アメリアはセレナに料理や掃除の仕方、洋裁、編み物、刺繍。
生活に必要な多くのことを教えている。
一見、王族には必要のない事のように思えるが、たとえどの国に嫁ぐとしても、セレナがうまく対応できるようにと、アメリアは考えているのだ。