寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 丸く大きな瞳で見つめられれば、テオでなくともジュリアから目が離せないだろう。
 すると、ジュリアが思い出したように目を開いた。

「テオにお願いがあるの」
「なんだ? ジュリアのお願いなら、何でも聞いてやるぞ」

 テオはデレデレと目を細め、ジュリアの返事を待つ。
 すると、ジュリアはかわいらしい笑顔とともに口を開いた。

「あのね、今度、ラウルも一緒にお馬さんに乗せてほしいの」
「は? ラウル? あ、あの悪ガキ……いや、元気がいい男の子か?」

 ジュリアの口から出た名前に、テオは顔をしかめた。
 まさか男の子の名前が出るとは思わなかったのだ。
 お願いだと言われ、おいしいお菓子やかわいいリボンでも欲しいのだろうと考えていたが、まさか男の子と一緒に馬に乗りたいとは。
 予想外のお願いに、テオはセレナに戸惑いの視線を向けるが、セレナは苦笑し肩をすくめるだけだ。

「ラウルもお馬さんが大好きなの。いつもテオが上手にお馬さんに乗ってるのを見て格好いいって言ってるよ」
「格好いい?」

 ジュリアの言葉に、テオはぴくりと反応した。

「うん。お馬に乗ってるテオは格好いいし、セレナと一緒にお馬さんで並んで走ってるの、羨ましいんだって。だからね、ラウルは大きくなったらジュリアと一緒にお馬さんで競争したいんだって」

 声を弾ませ、生き生きとした声で話すジュリアに、テオは複雑な表情を見せた。
 かわいがっているジュリアが、テオではなく、保育施設で仲がいいラウルと一緒に乗馬したいとは思ってもみなかったのだろう。
 セレナは悔しげなテオに同情しながらも、気を落としている姿がかわいいくて、笑い声を上げた。

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