寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



「じゃあ、ジュリアもひとりでお馬さんに乗る練習をしなきゃね」

 テオの腕の中のジュリアにそう言えば、ジュリアは「うん」と大きく頷いた。
 そして、期待に満ちた表情をテオに向けた。
 テオは小さな声で「ラウルかよ……俺はラウルに負けるのか……王子なのに」とぶつぶつ言いながらも、ジュリアの大きな目に見つめられればいちころだ。

「……わかったよ。まずは俺がジュリアとラウルと一緒に乗るから、もう少し背が伸びて足の力も強くなったら、ひとりで乗る練習をしよう」
「え、ほんと? やったー」

 テオの言葉に、ジュリアは両手を上げて喜んだ。そして、テオの首にしがみつく。

「テオ、大好き。ありがとう」

 小さな体をバタバタさせながら喜んでいるジュリアに、テオは「おいこら」と言いながらも嬉しさは隠しきれない。
 素直に喜ぶジュリアが羨ましくなったセレナは、動きを止めてその様子をじっと見ていた。
 テオはセレナの顔を覗き込むとニヤリと口元を上げた。

「ん? セレナも何かお願いがあるのか?」
「え、別に、何もないけど……」

 気持ちが見透かされたのかと、セレナは焦る。

「だけど、王女様のセレナは、欲しいものならなんでも手に入れられるだろうし、俺にお願いしなくても大丈夫だな」
 
テオはジュリアをゆっくりと床に降ろし、セレナに向かって肩をすくめる。

「ドレスも靴もたくさん持ってるだろうし、こないだ兄さんがセレナとクラリーチェにお揃いのネックレスをプレゼントしていたよな。貴金属も十分あるだろ? 俺から贈るものなんて、今は何もないな」
 
 意味ありげにそう言ったテオは、辺りを見回し、ジュリアの母親に向かって頷いた。
 すると、母親がジュリアのもとに駆け寄って来た。


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