寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「いつも娘をかわいがってくださり、ありがとうございます」
ジュリアの母親は、深々と頭を下げると、ジュリアを抱き寄せた。
「おふたりにお声をかけていただいて、抱っこまでしていただいてよかったわね」
優しい声で語りかける母親の声に、ジュリアは目を輝かせた。
「今度、ラウルと一緒にお馬さんに乗せてもらうの」
「ま、まあ。そんなわがままばかり……。お忙しいのに、申し訳ありません」
再び頭を下げた母親に、テオは首を横に振った。
「大丈夫だ。それくらい大したことじゃない」
「ですが……」
「いや、いいんだ。せっかくだから、施設の子供たちを順番に馬に乗せてやろうと思ってるんだ。気性が穏やかな馬を何頭か用意するから心配はいらないぞ」
テオは母親にそう言うと、ジュリアににっこりとほほ笑んだ。
「ラウルや施設の友達にも、楽しみに待つように言っておいてくれ」
「やったー。みんなで楽しみに待ってる」
テオの力強い言葉に、ジュリアは飛び上がって喜んだ。
「ジュ、ジュリア。テオ様に失礼ですよ」
興奮しているジュリアをたしなめると、母親は恐縮しながらテオとセレナにもう一度頭を下げ、テーブルに戻った。
ジュリアはテオとセレナを振り返り手を振った。
肩までのゆるい巻き毛が歩くたびに揺れている。