寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


「今度、かわいいリボンを作ってあげようかな……赤が似合いそう」

 カルロから最近贈られた布の中に、ジュリアに似合いそうな赤い生地があったと思い出した。
 ジュリアの喜ぶ姿を想像し、ふと笑えば、セレナが何を考えているのかを察したテオもくすりと笑った。

「こないだ届けた赤い布、ジュリアにぴったりだな」
「え?」
「ん? こないだ贈っただろ? 深い赤の布。 たしかそれに合う糸も一緒に」

 すらすらと話すテオに、セレナは首をかしげた。
 それはカルロからの贈り物なのに、どうしてテオが知っているんだろう。

「ジュリアはかわいいからなんでも似合うよな。大きくなったら男を振り回して笑ってるタイプだな……。それにしても、ラウルかよ。あいつも将来いいオトコになりそうだし、まあ、ジュリアに見る目があるってことか」

 セレナの戸惑いに気づくことなく、テオはぶつぶつ言いながらセレナの背中に手を回すと、スツールに座らせた。

「アメリアのパンが食べたいんだろ? 焼きたてを食べて、俺らも市を回ろう。ミノワスターで採れる宝石が似合う王妃になりたいって言ってたよな。いくつか並んでるはずだから、気にいったものがあれば買ってやってもいいぞ」
「え、あ、それは……。あの、テオ……?」

 セレナは何故テオが赤い布のことを知っているのか、そして、テオが今言った言葉も気になった。
 こういうことは、これまでにも何度かあった。
 テオが口にした言葉に違和感を覚え、何かがおかしいと、気になるのだ。


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