寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 女性からのあからさまな好意をにこやかに受け止め笑顔を返すテオの姿に、セレナはイライラする。
 それでも、テオが背後にいるセレナを振り返り、守るように彼女の肩を抱き寄せれば、一瞬でセレナは普通の恋する女の子の顔になる。
 この時間が少しでも長く続けばいいのにと、願ってはいけない願いを秘めながら、セレナは周囲からの声に応え、テオの体にいっそう身を寄せた。

 いくつもの露店が並ぶ通りの奥にようやくたどり着いた時、いつものことながらセレナの両手には持ちきれないほどの食べ物や、手紙などがあった。
 すれ違う人々や、露天の店主たちから渡されれば断ることなくもらっているそれらは、城に持ち帰って整理した後、城内で働く者たちと分け合うのだ。
 流行りのアクセサリーや本、珍しい紙や花をもらうこともあり、それらは侍女たちを喜ばせている。
 ランナケルドの国民と共に過ごす機会が多かったセレナは、国民たちにとっては王女であるだけでなく、人によってはかわいい娘であり、孫であり、そして姉妹でもある。
 王家と国民との距離が近いと言われるランナケルドの長い歴史の中でも、これほど慕われている王女は初めてだ。
 近いうちにミノワスターに嫁ぎ王太子妃となるセレナの幸せ、そして、残りわずかとなった彼女のランナケルドの日々が、楽しいものであるよう、誰もが願っている。


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