寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
セレナは好奇心旺盛で、それ以外にも木登りや泳ぎ、馬に乗ることも得意な女の子に成長した。
十歳となり、最近では王宮でダンスのレッスンも増えたが、これだけは苦手なようで、先生が来る日は離宮に逃げ出してくることも多い。
必然的に舞踏会も苦手で、セレナやクラリーチェも参加しなくてはならない国王主催の舞踏会が、セレナは大嫌いだ。
重いドレスも歩きづらい靴も、苦痛以外のなにものでもない。
今日も、王宮ではクラリーチェの誕生日を祝う晩餐会が開かれていて、各国から王族や貴族たちが招待されている。
セレナもドレスを着せられ、晩餐会に出席させられていたが、おいしそうな料理を前にしても自由に食べることもできず、礼儀正しく挨拶をしなさいと怒られ、逃げ出してきたのだ。
たくさんの人でごった返す王宮から離宮まで逃げ出すのは案外簡単で、アメリアに叱られながらも好物のシフォンケーキを食べさせてもらい、お気に入りの川辺でお昼寝を楽しんでいた。
セレナが離宮に逃げ出すのは想定の範囲内で、アメリアは驚くことなく離宮で働く侍女を王宮に向かわせ、その事を国王に伝えていた。
「あ、お魚が飛んだ」
お昼寝を楽しんだセレナが離宮に戻ろうとした時、川面にピシャリと音がして振り返れば、何匹かの魚が飛び上がっていた。
「いいな、自由に泳げて」
セレナはそう言って口を尖らせた。
そして、子供が着るには重すぎるドレスを見下ろし、おおげさにため息をついた。