寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



「テオ……」

 王城が次第に近づいてくる。
 城に着くと同時に楽しい時間は終わってしまう。
 テオと触れ合ったセレナの体は、今もその温かさを探しているようで、落ち着かない。
 婚約者のカルロでさえ、セレナに触れることは滅多にないというのに、テオはためらうことなくセレナとの距離を詰めようとする。
 まるでセレナが婚約者であるかのように、躊躇の欠片もない。
 けれど、それぞれに結婚すれば、会える機会は滅多にないはずだ。
 だったらこれ以上叶わぬ恋心をあおるようなことはやめて欲しい。
 カルロとの結婚を受け入れるしかないセレナには、テオへの想いを封じるしかないのだ。
 でも、もっと近づきたい……。
 
 セレナはおさまりがつかない感情を持て余しながら、せめて城に着くまでは笑っていられますようにと、唇をかみしめた。

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