寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「どうしてって、今日王宮で紹介してもらったぞ? もしかして、俺の事を覚えていないのか?」
ほんの少し不機嫌な声で見つめられて、セレナはドキリとした。
明るい日差しに輝く薄い茶色の髪がキラキラしていて目を奪われる。
それだけじゃない、黒い燕尾服にホワイトタイを身に着けた姿は凛々しく、整った顔と相まって、セレナは視線をそらすことができずにいた。
まだ十歳、されど十歳。
女の子はみな、格好いい男性には弱いのだ。
「お、王子様だ……」
セレナは目の前の男性を見つめ、思わずそう呟いた。
じっとしていることが苦手で、活発なセレナでも、突然現れた素敵な男性は王子様のように見え、ときめいた。
その男性は何を思ったのか面白そうに笑った。
「王子様?」
楽しそうにそう言った男性に、セレナは慌てた。
「あ、うん……でも、えっと、……王子様みたいに格好いいもん」
男性の質問の意味がわからず、セレナは不安げに答えた。
男性は、背の低いセレナに合わせるように腰を折り、同じ目の高さで見つめてくる。
目の前にある精悍な顔に、セレナの緊張は最高潮。
思わず後ずさった。