愛も罪も
 
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 勉強を終え、お風呂から出た後部屋に戻り、明日の学校の準備をする為、理奈は机に向っていた。まだ少し湿った髪を気にしながらも、片手で鞄を開け、中に入っている教科書を指で器用に捲りながら、必要の無い物を探している。

 すると、ドアの閉まる音が小さく聞こえた。

 確か部屋に入る時には、きちんとドアを閉めた筈なのに、どうして再び閉まる音がするのだろうかと不審に思い、後ろを振り返る。

 理奈は、ドアの前に異様な光景を目にして、驚いて目を見開き動きを止めると共に、暫し思考回路が中断してしまった。

 そこには、全身黒ずくめの服に覆われて、しかも顔には半分が隠れてしまう程の大きなゴーグルを着けた者が立っていた。

 その服装は、長袖のカットソーの上に膝丈まである袖の無い詰め襟の上着を着ており、その喉元から腹部にかけてジッパーが閉められ、両方の腰の位置から裾にかけてスリットが入っていた。そしてワークパンツの様なやや幅広なパンツに、安全靴の様な重みのある編み上げブーツを履いている。

 一体そんな出で立ちで何をするつもりなのだろうか。新種のパイロットの服か何かだろうか? まだ十月だというのにそんな厚着をしていて熱くは無いのだろうか? ハロウィンの仮装? …にしても、まだ少し早い……いや、そんな事より、こんな夜中に人様の家へ上がり込んで来るなんて、なんて非常識な人なんだろう。

 普通、常識のある人ならば、人の迷惑を考え、いくら急用があったとしても、せめて電話で済ますか、あるいは翌日に回すとかするのではないだろうか。きちんとした教育を受けているのならば、それが礼儀というものであろう。それを、ノックもせずに図々しく人の部屋に入って来るなど、失礼にも程がある。と、そこまで考えて不図気づいた。


 一体この人は誰なんだろう…。


 理奈の思考回路がやっと元に戻り始める。

「あなた、誰?」

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