両想い切符〜ふた駅先の片想い〜
俺の左頬を撫でていた梨捺の手が耳を伝って首筋に戻った
そして、梨捺はスッと目を閉じた
ずっと欲しかった。梨捺が…。
そんな梨捺がこうして俺の腕の中にいる。
俺の元に来てくれるって…。俺のことを誘ってる。
俺は自分の中の欲望に負けて目を閉じた
梨捺との距離、あと数ミリ…
『先輩!!!』
俺の頭に浮かんだのは、てんぼちゃんの笑顔だった
「梨捺……ごめん。」
俺がそう言うと梨捺は目を開けてさらに目を潤ませた
「遥人まで私のこと…」
「違うよ梨捺。お前は今、寂しいだけだ。
その寂しさを乗り越えて強くなれ。
それからまた本気で一緒にいたいやつを見つけてくれ。
俺はもう、大切な子を見つけたから。
梨捺にも絶対に現れる。梨捺のこと一番に大切に思ってくれるやつが。
だから。梨捺…。強くなれ。」