エリート上司の過保護な独占愛
「とりあえず座って、コーヒー淹れるから。いつものでいいよね?」

 リビングのソファに座るように言われて、それに従った。とりあえず絵美の部屋着を借りて大人しくソファに座っていたが、昨日のことを早く確認したくてしかたがなかった。

 コーヒーの匂いが部屋に漂い始めたころ、我慢できなくなった紗衣が絵美に尋ねた。

「あの……私、昨日の何も記憶になくて。もしかして、ここに来るまでの間、何か変なことしたり、口走ったりしてませんでしたか?」

 その問いかけに、絵美はマグカップを持ちソファに移動しながら答えた。

「うん。別に。呼びかけたら返事はしてたんだけど、それ以外はすやすや気持ちよさそうに眠ってた」

「そうですか……」

 迷惑をかけたことには変わりないが、とりあえずそれだけで済みそうだと思い安心した。しかしその矢先――。

「ここに来るまでは、何も言ってなかったわよ。〝ここに来るまでは〟ね?」

 もってまわった言い方に、嫌な予感がする。

「あの、それって……」

 耐えきれず聞いた紗衣に、絵美がニヤリとする。その含みのある笑顔に耐えきれず、絵美の淹れてくれたコーヒーをひと口飲んだ。

「紗衣。あなた天瀬課長のこと、好きでしょ?」

「ぐっ……ごほっ、ごほっ……」

 思わずむせてしまって、慌てて口元を抑えた。

「もう、汚い。ほら、ティッシュ」

 差し出されたティッシュを受けっとって、口元を拭う。しかし紗衣のショックは粗相をしたことよりも、絵美の言葉にあった。

(ど、どうしてばれちゃったんだろう。今まで三年間、誰にも気がつかれなかったのに)

 なんと答えたらいいのか考えていたが、紗衣の性格を知っている絵美は畳みかけるように質問を投げかけた。
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