エリート上司の過保護な独占愛
「ひっ!」

 小さな悲鳴をあげ、背後を振り向くとそこにはまだ主任だった裕貴が口元に人差し指を当てて「シー」というジェスチャーをしていた。そしてそのままその指を上に向ける。どうやら場所を移動しようと誘っているらしかった。

 沙衣はうなずくと、静かに裕貴の後に続く。するとエレベーターに乗せられて屋上まで連れてこられた。


「悪いな、こんなところまでつき合わせて。あんなうるさいところで休憩したくなかったんだよ」

 ぶんぶんと頭をふる。お礼を言わないといけないのに、上司にどういう態度をとればいいのかわからずに考え込んでしまう。

「まぁ、あの手のことは仕事してたらよくあることだ。だからって聞き流せとは言わない。見返すくらいの仕事をして、半年後に向こうから頼み込まれるくらい仕事ができるようになるといい」

 沙衣が聞いていた話は、裕貴のにも聞こえていたみたいだ。

「それに今回のことは、あっちも悪いから。もともとの指示がちゃんとできてないことを棚にあげて君を責めるのはお門違いだ。だから気にすることなんてない。俺は本城さんの作ってくれたプレゼン資料で契約とれたから、今度もお願いしよう思っているんだけど、いい? ゲン担ぎ」

 そう言って肩をすくめるようにした裕貴を見て、沙衣は思わずクスッと笑ってしまう。
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