エリート上司の過保護な独占愛
「そうそう。そうやって笑って仕事をしているほうが、色々うまくいくから。それからわからないことがあったら、濱中に聞くといい。あいつ頼られると喜ぶタイプだから、色々世話をしてくれるとおもうよ」

「はい。あの……ありがとうございますっ!」

 どうにかお礼を伝えることができた。さっきまで沈んでいた気持ちが幾分軽くなる。少なくとも前向きにはなれた。

「じゃあ、俺先に行くな。少しここで休憩していくといいよ。戻ってきたらこきつかうから覚悟しておいて」

 そういうと先に戻って行ってしまった。その背中をいつまでも見続けた。そのうち言いようのない胸の疼きを感じてしまう。

 そしてそれからというもの、常に裕貴を意識してしまうようになった。ふとした仕草、ちょっとした言葉。それのひとつひとつが積み重なって、沙衣の思いをどんどん大きくしていった。

 絵美にこれまで誰にも話さなかった裕貴への思いを打ち明けた。すっかり夢中になってどうでもいいことも話してしまう。

「メモをとりながら電話をする姿ねぇ……紗衣、それってばゾッコンの域に入ってるわね。まぁ、よくここまで私にまで隠し通せたわね」

 呆れ交じりの言葉に「すみません」と小さく頭を下げた。

「あやまらなくてもいいの……ただちょっと、かわいい妹が遠くにいっちゃうみたいでさみしいだけ」

 絵美の情の深さを沙衣はありがたく思う。

「でも、完全に私の片想いですから。私、とりたてて美人でもないですし、仕事ができるわけでもないですから」

 沙衣の言葉に、絵美は顔を渋らせた。

「また、そんなこと言ってる。その卑屈な性格どうにかしなさい。沙衣は私の自慢の後輩なんだよ。私が男だったら、手籠めにしてるわ」
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