エリート上司の過保護な独占愛
「ついてきてくれるよな? 天瀬紗衣になって」

 さらっと大切なことを言われて、心の準備が出来ていない紗衣はあせった。

「っ……それって、もしかして」

「そう、プロポーズ」

 そう言ったかと思うと、ポケットからすっと指輪を取り出した。

「本城紗衣さん……俺と結婚してください」

 裕貴らしい、ストレートな言葉だった。

「ず、ずるいです。こんな時にっ!」

 荷造りをしていたので、デニムにカットソー、それに眼鏡というなんとも地味な格好だ。

「そう? でもどんな紗衣も俺にとっては可愛いから。それより返事は?」

 窺うように顔を覗き込んできた。

「末永く……よろしくお願いいたします」

 差し出した左手に、裕貴が指輪をはめた。光り輝くダイヤが紗衣の指に幸せの象徴のように輝いた。

「よかった。これで何があっても紗衣の一番近くにいられる。取り急ぎ、もっともっと近づきたいんだけど」

 裕貴の熱い瞳が紗衣を見つめた。

 それにあわせてゆっくりと、目を閉じ彼の唇を待つ。

 左手には輝く指輪。そして右手には【本当の恋を手に入れる方法】――紗衣の恋の手助けになったあの本が握られていた。

END



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