エリート上司の過保護な独占愛
「そんなに謝らなくてもいいって。別に俺だけが助けたわけじゃないし、元はと言えば、慎吾が確かめもせずに君にアルコールを勧めたせいでもあるんだし」

 とはいえ、やはり裕貴は何も悪くない。

「あの私、これからはこのようなことがないように――」

「おいおい、俺の話ちゃんと聞いてたか? あ、でもそんなに悪いと思っているなら、ちょっとお願い聞いてもらえる?」

 仕事中にはみたことのないような、イタズラめいたその表情に思わずドキリとしてしまう。そのせいか、深く考えずに紗衣は「はい」と返事をした。

「ここ、相席していい?」

「え? そんなこと」

 自分の失態を償えるのであれば、なんでもするつもりだったが肩透かしを食らった気分だった。

「いや、今の俺には結構重要な問題。ほら、周り見て」

 言われるままに客席を見渡すと、どこも満席で座れる場所はなかった。

「ここの席に座っていいって言ってくれると、助かるんだけど」

 紗衣のかけた迷惑を考えれば、お安い御用といったところだ。

「はい。あの、是非どうぞ」

 つい舞い上がってしまい、変な言い回しになってしまったが裕貴はとくに気にしていないようだった。
< 21 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop