エリート上司の過保護な独占愛
「よかった、そんなふうに笑ってくれて。俺、実は本城に嫌われているかと思ってた」

「えっ? そんなことありません、絶対ありません!」

 勢いよく、しかも大声で力説する紗衣の姿に、裕貴は驚いたがその必死さがツボに入ったのか、クスクスと肩を揺らし始めた。

「そんなに一生懸命に言わなくても、人事評価に影響はしないよ」

 人事評価など今の紗衣にとっては、どうでもいいことだ。彼の誤解を解く方がよっぽど重要だった。

「すみません、なんだか不快な思いをさせていたようで、でもどうしてそんな……」

 さっきまでの喜びはどこへやら、どうしてそんな自分の気持ちとは全く正反対の誤解が生じてしまったのかと、不安になる。

「本城、いつも俺が話かけると緊張したみたいに固くなるし、すぐに視線を逸らせるから、嫌われてると思ってた」

「そんなっ、そんなこと全然ないです。私、課長のこと嫌ってないです」

 (むしろ三年間ずっと思い続けています――とは言えない)

 そのせいで、態度がぎくしゃくして相手にあらぬ誤解をあたえていたとは、思いもよらなかった。そもそもそこに考えが至るなら相手にそんな態度をとることもなかったのだろうけれど。

「勝手に誤解したのはこっちなんだから、そんなに謝らないでくれよ」

「いえ、誤解させたのは私ですから。本当にすみません」

 お互い一歩も引かずに謝り続けている。埒があかないと思った裕貴が提案した。
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