エリート上司の過保護な独占愛
第三章 恋にはみかけも大事です
「絵美……さぁん」

 翌日の朝のロッカールーム。沙衣は絵美を呼び止めた。

「ひっ……何そのひどい顔。眼鏡かけててもわかるくらいひどいクマができてるわよ」

 それはすでに、化粧をするときに確認済みである。

「すみません、朝からこんなで……」

 昨日意気揚々とやる気満々で電話を切ったにも関わらず、翌朝にはまるでゾンビのような生気のなさだ。絵美がびっくりするのも無理はない。

「実は昨日あれから、あの本をじっくり読んだんです。でも……いっこもできそうなことがなくって。私、なにか女として欠陥があるんでしょうか?」

 泣きついた沙衣を、絵美はあきれることなく諭した。

「ほら、本を読んだくらいで、さっさとなんでもできたらみんな恋愛マスターよ。できることからコツコツやらないと。そうだ……週末、時間とって。私が沙衣の恋のお手伝いしてあげるから」 

 ウィンクした絵美が、どこか面白がっているように見えた。しかし沙衣はそんな絵美にも気づかずに「よろしくお願いします!」と頭を下げていた。
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