エリート上司の過保護な独占愛
おそらく今行っても、他の人に気を遣って話をできないに違いない。紗衣は遠慮することにした。
「あの、私は後から行きますから」
「そうか。わかった」
裕貴は短くそう言うと、皆に囲まれているふたりの元へゆっくりと歩いて行った。紗衣はその背中をじっと見つめて「はぁ」と溜息をひとつついた。
(せっかくいろいろと話ができるチャンスだったのに。)
今日の日を楽しみにしていた。職場の大好きな先輩の婚約パーティに出席することもそうだが、密かに思いをよせる裕貴と話ができるチャンスがあるだろうと思っていたからだ。
実際にそのチャンスが訪れたのだが、まったくモノにできずに結局いつものように、とりたてて意味のない会話しかできなかった。
入社して三年――片想い歴も三年になった。社歴とともに長くなる天瀬への恋心はいまだ沙衣の心の内に秘められたままだ。
壁際に移動して会場を見回す。みなそれぞれ絵美と慎吾を祝い、楽しそうに過ごしていた。
沙衣とてもちろんお祝いする気持ちは誰よりも大きい。ただこういった場所は不慣れなうえ、初対面の人と話をするのは得意ではないのでこうやって壁際で大人しくしているほうが安心できた。
すると隣に見慣れない男性が並んだ。
「ねぇ、ちょっといい?」
「あの、はい」
いきなりのことで、不審に思っていたのが顔に出てしまった。
「あの、私は後から行きますから」
「そうか。わかった」
裕貴は短くそう言うと、皆に囲まれているふたりの元へゆっくりと歩いて行った。紗衣はその背中をじっと見つめて「はぁ」と溜息をひとつついた。
(せっかくいろいろと話ができるチャンスだったのに。)
今日の日を楽しみにしていた。職場の大好きな先輩の婚約パーティに出席することもそうだが、密かに思いをよせる裕貴と話ができるチャンスがあるだろうと思っていたからだ。
実際にそのチャンスが訪れたのだが、まったくモノにできずに結局いつものように、とりたてて意味のない会話しかできなかった。
入社して三年――片想い歴も三年になった。社歴とともに長くなる天瀬への恋心はいまだ沙衣の心の内に秘められたままだ。
壁際に移動して会場を見回す。みなそれぞれ絵美と慎吾を祝い、楽しそうに過ごしていた。
沙衣とてもちろんお祝いする気持ちは誰よりも大きい。ただこういった場所は不慣れなうえ、初対面の人と話をするのは得意ではないのでこうやって壁際で大人しくしているほうが安心できた。
すると隣に見慣れない男性が並んだ。
「ねぇ、ちょっといい?」
「あの、はい」
いきなりのことで、不審に思っていたのが顔に出てしまった。