エリート上司の過保護な独占愛
「ここの数字なんですけど、これで合っていますか?」

 画面を確認した大迫が、うなずいた。

「それで合ってるんだ。どうやらかなり業績が悪化してるらしくて、うちへの注文もどんどんへってきてる」

「そうなんですか」

「まぁ、あっちの業績の悪化だから、俺たちが手出しできることでもないしな。あ、それより昨日の朝、頼んでたプレゼン資料ってどうなった?」

 大迫のなかでは、そう大きな問題でもなかったようで、話はすぐに終わった。

「それなら、昨日の内にサーバー内のフォルダに保存しています」

「ありがと。仕事が早くて、しかもかわいいなんて、本城さんが俺のアシスタントでよかった、なぁ……」

「大迫、行くぞ」 

 話に割って入ったのは、裕貴だった。これからふたりで得意先回りに向かうようで、すでに外出する準備ができていた。

「やべっ。すぐに行きますっ!」

 大迫は話もそうそうに切り上げて、あわてて準備をすませると先にフロアを出た裕貴の後を、追いかけて行った。

(これで合ってるんだ……)

 パソコンの中の数字を見て、なんだか寂しい気持ちになった。メインではないけれど自分がずっと携わってきた会
社だ。担当者ともよく話をする。会社によっていろいろ事情があるのも理解しているけれど、関係が希薄になっていくような気がしてしまった。

 沙衣は大きく深呼吸をして気持ちを切り替えると、すぐに別の仕事にとりかかった。
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