エリート上司の過保護な独占愛
「あの、絵美さん……」

 他の人の間から、そっと声をかけた。

「あ~~~、沙衣、やっと来た。もうずっと遠くにいて心配だったんだからね」

「すみません、なかなかタイミングが」

 絵美は何事もうまく立ち回れない沙衣のことを、姉のように心配していた。今日とて主役は自分なのに、壁際にたつ沙衣を気にしていたのだ。

「あの、三谷さん、絵美さん、ご婚約おめでとうございます」

 ふたりに今日伝えたかった言葉を伝える。

「ありがとう。沙衣~~」

 ぎゅーっと豊満な胸に押し付けられるように抱きしめられ、息苦しさを覚えるほどだった。背中をタップをするとやっと解放してもらえた。

 危うく呼吸困難になるところだった紗衣は、大きく息を吸い込んで、絵美の話を聞いた。

「それより、さっきの男の人、誰? 知り合い?」

「いえ。三谷さんの後輩だって言ってましたけど」

「もしかして、ナンパされたの? 私の紗衣になんてことを!」

 (私、いつから絵美さんのものになったの?)
 
 そう聞きたいけれどエキサイトしている絵美には、口を挟まないほうが無難だ。そんな紗衣を気遣って、慎吾が頭を下げた。

「悪いな。アイツ悪い奴じゃないんだけど、最近彼女と別れたらしくてさ。かわいい子見つけるとつい話しかけてしまうだと思う」

「か、かわいいなんて、滅相もない」

 紗衣は両手を振って、全力で否定した。
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