エリート上司の過保護な独占愛
第五章 小悪魔には素直さで対抗しましょう
桜の花もすっかり散ってしまい、青々とした葉に変わっていた。その桜並木の下を紗衣は緊張から頬をほんのりと赤くさせドキドキしながら歩いていた。
会社が休日の土曜日。待ち合わせの時間にはまだ二十分ほどある。焦る必要もないのに気持ちが急いて浮足立つ。
それも仕方のないことだ。待ち合わせの相手が思いを寄せている裕貴なのだから。
事の発端はその週の水曜日。ランチから戻る廊下で裕貴に呼び止められた。
「今週末、土曜日か日曜日あいてるか?」
その言葉にドキンと胸が大きな音を立てた。まだ話の内容も聞いていないのに……と心の中で諌めてみるが、期待してしまう。
「はい。大丈夫です」
「よかった、三谷と濱中の結婚式の二次会の会場探し、そろそろ始めようかと思って。幹事ふたりで決めたほうがいいだろう?」
「か、幹事ですかっ⁉」
絵美から打診さえされていなかった紗衣は、声をあげて驚いた。
「あれ? 聞いてないのか? まいったな。俺、ひとりで決めてもいいけど――」
「いえ、行きます」
自然と口から返事が出ていた。ほんの少し前の紗衣からは考えられないことだった。前向きな変化に一番驚いたのは本人だ。
「そうか、――じゃあ、土曜の二時に駅前のこの間の本屋の前で。いい?」
「はいっ」
弾んだ声に、歓喜がみてとれて恥ずかしいと思う。けれど隠しきれないほど、この裕貴からの誘いがうれしかった。
会社が休日の土曜日。待ち合わせの時間にはまだ二十分ほどある。焦る必要もないのに気持ちが急いて浮足立つ。
それも仕方のないことだ。待ち合わせの相手が思いを寄せている裕貴なのだから。
事の発端はその週の水曜日。ランチから戻る廊下で裕貴に呼び止められた。
「今週末、土曜日か日曜日あいてるか?」
その言葉にドキンと胸が大きな音を立てた。まだ話の内容も聞いていないのに……と心の中で諌めてみるが、期待してしまう。
「はい。大丈夫です」
「よかった、三谷と濱中の結婚式の二次会の会場探し、そろそろ始めようかと思って。幹事ふたりで決めたほうがいいだろう?」
「か、幹事ですかっ⁉」
絵美から打診さえされていなかった紗衣は、声をあげて驚いた。
「あれ? 聞いてないのか? まいったな。俺、ひとりで決めてもいいけど――」
「いえ、行きます」
自然と口から返事が出ていた。ほんの少し前の紗衣からは考えられないことだった。前向きな変化に一番驚いたのは本人だ。
「そうか、――じゃあ、土曜の二時に駅前のこの間の本屋の前で。いい?」
「はいっ」
弾んだ声に、歓喜がみてとれて恥ずかしいと思う。けれど隠しきれないほど、この裕貴からの誘いがうれしかった。