エリート上司の過保護な独占愛
 それから今日まで、沙衣は遠足を待つ子供の様に楽しみに待っていた。

 クローゼットの中をひっくり返し、あれでもないこれでもないと洋服を選んだ。結局洋服が決まったのは出発する三十分前。沙衣は移動のことも考えて、動きやすさ重視のバレエシューズを履くと、急いで部屋を出たのだった。

 はやる気持ちを抑えながら、待ち合わせ場所に向かう。近くに行くと入口で長身の男性が立ってスマートフォンを眺めていた。

(えっ、もう待ってる?)

 待たせては失礼だと思い、早めに出発したにも関わらず、裕貴はすでに待ち合わせ場所にいた。沙衣が小走りで近づくと、気がついたようで軽く手を挙げた。

「お待たせしてすみません」

 急いで駆け寄った沙衣は、頭を下げた。

「そんなに急がなくてもよかったのに。まだ時間前だろ? 大丈夫だったら行こうか? 勝手に回る店の順番決めたんだけどよかったよな?」

「はい」

 半歩前を歩く裕貴について、歩きはじめる。斜め後ろからみる普段着の裕貴。

 仕事中とも婚約パーティの時とも違う、今日の彼は白のカットソーにインディゴブルーのカーディガン。ホワイトデニムが良く似合っている。セットされていない洗いざらしに近い髪のせいか、いつもよりもとっつきやすい印象だ。

 裕貴が前を向いているのをいいことに、紗衣は普段なかなかじっくり見られない彼を観察していた。そのとき、ふと裕貴が紗衣を振り返り目があってしまう。
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