エリート上司の過保護な独占愛
 意気地のなさに肩を落としたときに、ふと壁にかかっているファブリックパネルが目に入った。

「ここは北欧スタイルで統一されていますね。食器も、インテリアも。あのパネルのテキスタイルは初めてみました・・・・・・どこのでしょうか? あ、すみません」

 思わずペラペラと喋ってしまった。好きなものを目にすると夢中になってしまう。子供じみた自分の性格を恥じて謝った。

「いや、謝るようなことじゃない。俺はその本城のすぐに夢中になるところがいいと思ってるから」

 〝いい〟なんて言われて、舞い上がりそうになる。好きな人の言葉というものは、こんなにも力があるものなのだと知る。

 裕貴の言葉に甘えて、話を続けた。

「自分が作り上げたデザインで、家具や洋服なんかが作られていくって素敵なことですよね。そのぶん感性や知識が必要な大変な仕事だと思いますが」

 そこまで口にして、ユニヴェールの藤本の顔が浮かんだ。デザイナーが抜けて会社が思うように回っていないという話だった。思い出した心配ごとで途端に顔が曇ってしまう。
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